胃・十二指腸潰瘍

胃や十二指腸の粘膜がただれ、深い欠損が生じるという病気で、その欠損の浅いものはびらんと呼ばれ、粘膜の下まで深くえぐれた状態を潰瘍(かいよう)といいます。

潰瘍があっても、欠損が小さく浅い場合は、自覚症状がほとんどないことが多く、自然に治ってしまう事も少なくありません。一般的な潰瘍の症状としては、腹痛、胸やけや胃の不快感、出血(吐血と下血)があります。また、吐き気や嘔吐、食欲不振などの症状が見られることもあります。

出血量が多いとショック状態におちいることもあるので、急いで治療をする必要があります。さらに重症の場合は、胃に穿孔(せんこう)(穴があくこと)が起こることがあります。穿孔(せんこう)が起こると激痛と吐血を起こし、胃液や食べたものが腹腔内に流れ出して「腹膜炎」を起こします。このような場合は、できるだけ早く手術を行う必要があります。

胃、十二指腸潰瘍は、粘膜を攻撃する攻撃因子と粘膜を保護する防御因子のバランスのくずれによって起こります。攻撃因子である胃液のはたらきが強すぎるか、粘膜の防御因子が弱っていると、わずかな胃液が粘膜を傷つけてしまうこともあります。

攻撃因子と防御因子のバランスには、精神的、肉体的なストレスが多分に関係しています。強いストレスがかかると、自律神経やホルモンのバランスが崩れ、そのため、攻撃因子と防御因子のバランスも崩れてしまい、潰瘍が起こります。

また、最近は、ヘリコバクター・ピロリ菌の存在もわかってきました。この菌が胃に存在する人は潰瘍の治りが悪く、再発しやすいといわれています。

治療は、胃液の分泌を抑えたり、粘膜を保護する薬を用います。出血が止まらない場合や穿孔が起こった場合は、内視鏡を使った治療や外科手術を行います。

日常生活では熱いものや辛いものを避け、消化のよいものを食べるようにし、精神的、肉体的な安静を保つことが大切です。

エコノミークラス症候群

みなさんは肺塞栓症という病気を御存知でしょうか?
この肺塞栓症という名前はあまり聞いたことがないと思いますが、実は最近、特に旅行シーズンなどになると多い病気で、一般には「エコノミークラス症候群」という名称で呼ばれることが多いようです。
なぜこの名称で呼ばれるようになったかというと、飛行機に乗っていた方が肺塞栓症にかかり、その結果肺梗塞を起こし、そのことが訴訟問題にまでなったことに理由があるそうです。

それではこの肺塞栓症について、これは時には命にかかわるような恐い病気なのですが、その原因、症状、治療法などを簡単に述べていきたいと思います。

まず肺塞栓症が起こる原因です。それは肺の動脈に血栓が流れこんでしまい、そこから先の肺の組織が壊死してしまいます。
その血栓ができるのはなぜかというと、いくつか原因があります。

今回取り挙げた「エコノミークラス症候群」においては、せまい飛行機の中では長い時間あまり動かずにほとんど同じ姿勢で過ごすため、身体全体の血行が悪くなり、特に膝から下の部分にうっ滞が起こりやすくなります。機内は湿度が10%ぐらいに乾燥していますから、水分不足により体内の血液の濃度が濃くなって凝固しやすくなり、膝から下の静脈が血栓ができやすい状態になります。ちなみにこの状態は飛行機のエコノミークラスに限って起こることではなく、ファーストクラスや同じように長時間同じ姿勢で座ったままの長距離バス内でも起こる可能性が高いです。

こうして静脈内にできた血栓が、身体を動かした時など、血液の流れに乗って肺の動脈へと到り、動脈の一部を詰まらせ壊死を引き起こします。血栓の他にも同様に肺動脈を詰まらせるものには、脂肪や羊水などがあります。

肺塞栓症の症状は呼吸困難、胸の痛み、チアノーゼ、血痰などの他に死に至る可能性もあります。

次に治療法ですが、まず酸素の投与、必要に応じて鎮痛薬を用いるそうです。さらに血液の凝固を抑制するための薬を投与し、死の危険が迫っていると考えられる患者には外科手術も行うそうです。

このように死に到る可能性もある「エコノミークラス症候群」ですが、適切な水分の補給が行われれば、多くは予防できるそうです。トイレの利用を避けようとして水分の摂取を控えるという人が女性には見受けられます。飛行機の中では、ひんぱんにトイレに行くのは気が引けるでしょうが、1時間にコップで一杯ほどの水を少しずつ飲み、つま先を上下させて、ふくらはぎの血行を促すことで、血栓ができるのを防ぎ、肺梗塞を防ぐことができるそうです。ぜひ実践してみて下さい。

院内感染

先日、東京都世田谷区の病院で発生した院内感染事件は、死亡者7人を出したことからご記憶の方も多いかと思われます。病院は当初時節がらインフルエンザの感染を疑ってしまったために初期対応が遅れたことが、その後の調査で明るみに出ました。実際にはこの時の院内感染の原因はインフルエンザウィルスではなく「セラチア菌」という細菌によるものでした。この病院には院内感染マニュアルもなく、また感染症の専門医もいなかったため、適切な対応を取ることができず、被害を拡大してしまいました。死亡した患者はいずれも静脈に直接点滴で栄養を取る処置を受けており、点滴の針が長時間ささったままで細菌感染しやすい状態にありました。「セラチア菌」が血液中に入ると、エンドトキシンという毒素の影響で患者はショック状態に陥り、血圧が急激に下がるという特徴があります。もしこの場合、院内感染の知識のある医師が患者の血圧を測っていれば早期に被害拡大を防ぐことができたのではないかと思われます。

本来病気を治すために入院したり、来院したりする患者や、医師・看護婦(士)など医療従事者に病気が感染することを「院内感染」といいます。院内感染は病院内で使用する器具などに付着した菌が原因と考えられており、セラチア菌の他、様々な細菌によって起こります。病気や外傷などで入院して、体力が落ちている患者は特に感染しやすく、世田谷の事件のように死亡につながることもめずらしくありません。

院内感染の原因菌のうち、最も注目されているのはMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)です。MRSAはどこにでも存在していて、健康人が感染しても症状が出ることはまずありませんが、入院患者や生まれたばかりの乳児が感染すると高熱が出たりします。普通、細菌に感染したら、抗生物質で殺したり、その働きをおさえたりできますが、MRSAには一部の抗生物質がきかなかったり、きいていた抗生物質がきかなくなってしまったりします。これを抗生物質の「耐性」といいます。多くのMRSAは鼻腔粘膜や辱瘡(とこずれ)に住み着き、患者A→看護婦、家族→患者B→看護婦→患者Aというように病院内で感染のサイクルを作ってしまい、抗生物質に耐性を持ったMRSAに再び感染してしまうという様なことが起こります。この様にして見るとMRSAをはじめとする院内感染が増加している背景には、実際、医療現場での抗生物質の乱用があることは否めません。

またMRSAなど院内感染の原因菌が病院以外の場所、例えば保育所、幼稚園、学校などで問題となることはありませんので、過剰に恐れる必要もありません。重要なのは病院で働く職員は、ひょっとしてMRSAを持つ患者であることを知らずに接触して、自分の手に付着させ、次に別の患者に手を介して伝播させる可能性があるかも知れないことを考慮して、いつも手荒い・手指消毒を徹底しなければなりません。

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